……ふと不安になって今年映画館で見た映画の本数を数えてみると、どうやら100本超えるペースのようで、どこが禁欲中やねんと自分自身にツッコミを入れながら、もうこうなったらおんなじじゃい!とヤケをおこし、『崖の上のポニョ』を見てしまいました(とはいえ、たったこれだけしか映画を見ない生活というのは17年ぶりくらいのことなので、なんだか落ち着かない……)。
凄いことになっているというのは複数の人から聞いておりましたが、本当に凄いことになってました。うねる無数の魚と化した波頭を駆けるポニョと猛スピードで疾走する車のデッドヒート――今この瞬間に息が絶えても思い残すことは何もないと半ば以上本気で思いました。「世界の綻びは綴じられました!」という歓喜の叫びの白々しさにも心底感動させられました(これだけ喜々として綻ばせておいて何を今さら……)。というか、
後半出てくる人間全員死んでるだろ、と誰もが抱く疑念を当然抱くわけですが、不思議なことが次々起こって私たちにはよくわからないけれどいつかわかるときがくるでしょう、という唖然とするしかない図々しい台詞ですべての疑問はあらかじめ宙吊りにされ、世界ぶっつぶしておいて101分でろくに責任とらずにめでたしめでたしかよと、もはや感涙に咽ぶしかないのでありました。
要は『アワーミュージック』の天国篇を『宇宙戦争』のスケールにまで肥大化させたようなとんでもない代物なのに、これをファミリー向けお子ちゃま映画として大ヒットさせてしまう宮崎駿って何なんでしょう? ただただ恐ろしい……。
(ああそうだ、あれは何というのか、造船所のドックを横切る道路……素晴らしい!)